いきなりであれなんだけど。
あたしは、ちょっぴりおちゃめなかんじで地面に穴掘って、そこにガウリイを詰めてみた。

いやね、ほんとにささやかな悪戯のつもりだったんだけど。

こうも、綺麗にはまってくれるとは思ってなかった。

ベフィスブリングで穴掘って、その上から枯れ枝や草を被せてカモフラージュ。
子供が良くやる可愛らしい落とし穴なわけなんだけど。


まさかカンの良さは獣並みと定評のあるガウリイがこうも簡単に綺麗に見事に
あっけなく「うわっ!」って悲鳴まであげて落ちてくれるなんて、普通思わないじゃない?

仕掛けた側のあたしまでびっくりしちゃって、そりゃあもう、笑うのも忘れて駆け寄ったんだけど。

・・・・・・ガウリイの奴、拗ねて穴から出てこないんでやんの。

だから正確には詰めてみた。じゃなくて、詰まってでてこない。が正解。



カァ〜♪

頭の上でカラスが鳴いてる。

えーと、そろそろ機嫌直して次の街まで急がないと
今夜は野宿になっちゃうんですけど、ガウリイさん?


「・・・・・・あたしが悪かったわ。 だから、機嫌直してでてきてくんない?」

とりあえず穴の縁にしゃがみこんでの交渉開始。

下手したら今夜の食事はかなり持っていかれるかもしれない。
慰謝料だなんだって、こういう時に限って頭が動くのよねガウリイってば。
う〜みゅ、なるべくリーズナブルなお値段の店探さなきゃ。

「お前なぁ・・・・・・人をからかうのもいい加減にしろよ」

完全にふてくされているガウリイは膝を抱えてそっぽ向いたまま。
自力で穴から出てくる気はないようだ。

「何で今日に限って嵌っちゃうのよ。いつもだったらこんなのに引っかかるガウリイじゃないでしょ?」

悪いのはあたし、だから手を差し伸べるくらいはやらなきゃね。
これ以上拗ねられたらストーンゴーレム作ってそのまま一緒に詰めるけど。

差し伸べた手に重なる大きな手は、ところどころ土で汚れていた。


「念の為に訊くけど、足捻ったり傷めたりしてないわよね」

うんしょ、うんしょ。やっぱりあたしだけの力じゃ引き上げられないか。
浮遊の術なら簡単だけど・・・・ガウリイが自力で立ってくれれば済む話なんだけどな


「ま、たまには付き合ってやろうと思ってな」

穴の底から飛びっきりの笑顔を見せ付けた相棒は、
いきなり握ったままの手をグイとひっぱって。

「きゃあっ!?」

結果として、あたしまで穴の中に嵌ってしまった・・・らしい。

落下位置はちょうどガウリイの足の上。
っていうか、ほぼ彼に覆いかぶさるようなかんじ。

「子供なら仕返しも必須だよな」

ガウリイはあたしの顔を覗き込むと、してやったりとケラケラ笑って
人の鼻先を指でつついて、また笑って。

「やられちゃったわ」

つられたあたしも、しっかり笑った。



ぎゅうぎゅう狭い穴の中に、ガウリイと二人きり。

この状況が自業自得とは言え、誰かに見られたりしたら
非常に恥ずかしいので早く出なきゃいけないんだろうけど。

妙に居心地がいいのはどうしてだろ、困ったもんだわ、まったく。

薄暗い穴の中で、ちょっぴり頬が火照ってしまったのは
ここだけのヒミツってことで、お願い突っ込まないでぷりーず。